Friday, March 14, 2014

瑕疵担保期間を長引かせるためにITシステムの”検収”を終わらせないユーザー

システム開発に関わっている人にとって、”検収”という言葉は大きな意味を持ちます。なぜなら、ユーザー側の検収が終わった時点から”瑕疵担保期間”がスタートするからです。
そもそも瑕疵担保期間とは何でしょうか。
法務上の用語なので難しく感じられますが、一言でいえば、「システムにバグが見つかった際に無償で改修することを保証する期間」です。あなたがPCを購入する際に、1年間のメーカー保証は大抵ついてきますよね。購入日から1年以内であれば、故意・天災による破損を除いて、メーカーが無償で修理してくれます。その保証期間をITシステムでは”瑕疵担保期間”という言葉で表現するのです。
民法では1年で設定することが標準的な考え方ですが、システム開発では6ヶ月としているケースが多いですね。これは1989年に発刊された大著『ソフトウェア取引の契約ハンドブック』で次のような記載がされているからです。
『商法第526条は、商人間の売買について、買主は遅滞なく検査をなし、瑕疵を発見した時は直ちに(ただし、隠れたる瑕疵は6か月以内に)売主に通知しなければ、売主の担保責任を追及しえない旨定めている。これは、売主が引き渡し後いつまでも不安定な立場におかれることを回避するための規定である。』
もうすこしカンタンに言うと、「明らかなバグはすぐにベンダーへ伝えて直してもらいましょう。後から発覚したバグは6か月以内ならベンダーで無償対応しましょう。それ以降の対応は、ベンダーの経営に悪影響を及ぼすから、認めないことにしましょう。」ということです。ですから、システム開発ベンダーの方々は、開発後の6ヶ月までが呼び出し対応を受ける期間になるのですね、形式的には。
しかし、ユーザーが大企業である場合、事情が異なります。6ヶ月を過ぎたから、そのあとに出てきたバグには一切責任を負いません、なんて姿勢を取ろうものなら、「あのベンダーは柔軟性に欠けるから次のシステム開発は任せない」というカウンターをもらうことは容易に想像できます。
ただし、曲がりなりにも大企業というのは契約書面を重んじます。そのため、システムの検収時期をできるだけ後ろ倒しにしようと働きかけてきます。もしくは、ソフトウェア取引の慣例となっている6ヶ月検収ではなく、民法一般上の慣例となっている1年の瑕疵担保期間の設定を求めてくることが多々あります。
実際のところ、システムが本番稼働してからでないとバグが発覚しないというたぐいもあるため、ユーザー側は瑕疵担保期間の開始を本番稼働時点とするよう求めてくることには一定の合理性があり、ベンダー側としては、そのケースになったとしても受け入れられるように関係者との段取りを進めておくことが望まれますね。
なお、ユーザー検収にあたっては、見つけた全てのバグの解消を確認できるまでは検収を終わらせるべきではないと考えるユーザーはかなり多いです。これについて、ベンダー側は本番稼働をもって検収完了にするという交渉で臨むのが定石ではありますが、稀に、「バグの発見・解消が終わるまでは本番稼働はしない」という断固とした姿勢をとるユーザーもいます。こうしたケースでは、ベンダー側が「今稼働させないことによる業務的な損失」を説明して納得させるしかありません。
他にも、瑕疵担保期間中にバグが発見された場合、そのバグが解消されてから新たに瑕疵担保期間がスタートするというベンダーにとっては悪夢のような条件を持ち出してくるケースもあります。さらには、瑕疵担保期間の後ろ倒しに伴う、保守サービス期間の延長(通常は設置後5年のところを、瑕疵担保期間が半年ずれたら保守期間も料金据え置き)を求めてきたという話もありました。
ユーザー側、ベンダー側の双方が不当な契約を結ぶことがないよう、一般的な契約文書の内容を知っておいて損はありません。経産省から出されている『情報システム・モデル取引・契約書』が昨今の契約条件の判断基準になっています。契約締結に関わる方々は、このドキュメントは一読しておくことをお勧めします。

http://blogos.com/

No comments:

Post a Comment